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百韻「日月は」 2019.4.16 起首
日月は旅人なりぬ花に雪 雀羅 花・春
雀の子らの集う軒先 古柏
春の朝川柳欄を食卓に 不映
上司と似た名いつも見つける 芳
潮の香の導く先に海と空 村宅
丸太くり抜き翌(あす)に漕ぎ出す 安庵
謫仙は飛鏡に杯を傾けて あさ 月・秋
萩散る庵に残る足跡 優
ウ
銀杏と君のしているイヤリング 五帳面
皿洗いつゝ下の名で呼ぶ さ
愛の巣に磯の匂いの満ちる朝 羅
あの石巻に似たる青空 竜馬
転生を信じて崖に夏花(げばな)つみ さ 三夏
みそっ歯の児の笑顔満開 小石
外つ国の言語行き交う先斗町 宅
脱出ゲーム知恵を出しあい 芳
包帯がしだいにほどけ大股に ゆかり
ニッカボッカのキタにはためく さ
いっぷくに背ナを丸める暮の月 芳 月・冬
足らぬ食材思うまなざし うに
菓子工場跡地の草のかぐわしき さ
こちにかしらを上げる老犬 柏
二オ
公園に似顔絵画きの春火桶 庵
明確にせぬ恋の行方は 宅
会いたいと思う気持ちがくやしくて 芳
着信通知見てはため息 香
腰折れの気配は仮想通貨にも 羅
タラップ降りる頬に秋風 に
カンナ咲く故郷へ向かふ定期船 映
良夜を破るロックンロール 々 月・秋
花道の先にかすんでいる希林 羅 花・春
新入生の列を見守り 芳
目借時竿竹売りのこえとおく さ
あめのしづくのもぢとなりける 五
足元の大きな鼠おいはらい 芳
遅しといひてアミダ振向く 庵
二ウ
かゞやける沖に傾きヨットの帆 さ
生れし浦磯出でぬわれから に
君とゆく観月橋に蝉の声 五 月・秋
転びたる妹(いも)負うて花野へ 庵
すさまじき指ロザリオの珠を繰り さ
足に履かせる古いそろばん 芳
駆け出して丘を走って未来へと 五
カスタネットがいやだった頃 雀
受付のPepperくんが指す夕立 さ
俺は塩顔うん多分そう 五
旧友と記念撮影桜島 海老まよねーず
よくろんぼとか示現流とか 羅
飛行する頭の下に春の雷 芳
ビニールハウス種蒔きを終え 原つぱ
三オ
乳清に立てるさゞなみ夏近し さ
コンソメスープ音をたてずに 芳
○芳さんは自他場を気にしながら付句されてますね。打越句は自他場で言えば付句同様「自」ですが、これは農人の視点ですし、「コンソメ」句も「自」にはなりますが、戸外から室内に転じており、人物も農人ではなく女性(多分)と思います。1句の内容もがらりと変わっています。こんなに違う成分の多い打越でありながら「自他場」を気にし続けるというのは自他場の意識過剰かも知れませんね。「句が良くて付句が転じているならば自他場にとらわれる必要はない」と自他場論を指導された東先生の言葉もあります。「コットンパック肌に栄養」は自ともとれますが、“普遍的真理”をいうものであれば「場」です。どちらかというと標語っぽい詠み方です。
子規の連句は十数巻ほど読むこと出来ます『子規全集』(講談社)にあります。また子規の独吟百韻というものもあります。悪くはないです。言論は厳しいですが、恋句は随分マイルドで、慎み深い人です。恋句一句捨てもあります。悪所通いも先ずしてません(柳原極堂の証言があります)。いかがわしい連句より、潔癖な俳句を真芯に打ち出すのが性にあっていたでしょうね。
「赤ちゃん白虎あした公開 庵」、前句からミルクの表面に々さざなみを立てながら、裏舌で巻き上げ飲みをする猫を連想したのですね(虎は猫科)。
「洗い青梅を渡す叔母の手 五帳面」、春から仲夏に季移りですが、場所によってはこんな景色もあるでしょうね。打越の農作業に通うところあるかな、という感じはありますが、つよいことありません。
「節榑(ふしくれ)た腕捲(まく)る細工師 ず」、転じもよく、面白く付いていると思います。そうでした。ずいぶんユニークな俳号と思いましたが、海老まよねーずさんは漫画家の「新星エビマヨネーズさん」でしたね。「桜島」が出たからとエキスキューズ書きましたが、実は私もなぜ自分が鹿児島弁をあそこで唐突に書き出したのかわかりませんでした。自動書記みたいなもんですね(^^) 連句の転じ方は4コマ漫画によく似ています。漫画も連句もがんばって下さい。束脩をいただく関係にでもなればですが、ここでは先生はおやめ下さいね。連句の席ではみな平等です。
芳さん、草取りの最中に付句が気になって戻るというの、いいですね。「立てる」「たてず」、打越ではないし、構わないですよ。連句は少しぐらいノイズがあった方が野趣があっていいのです。ぴかぴかに磨きをかけない方がよいです。
ではどうぞ。