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歌仙「紙舟に」 2019.6.1 起首 【5時~6時治定】
紙舟に風待月の潮路かな 雀羅
橋の彼方にはまなすの島 桃太郎
ふる里の夢を青磁に染め付けて 芳
薪棚を薪いっぱいにする うに
女子寮の語らひさやに十三夜 しをん 月・秋
藻に住む虫の立てる聞き耳 優
ウ
この時と韋駄天走り茸番 芳
穴あき銭を鳴らす親分 千百
寅年に猫を預けるめいわくさ 羅
星占いで相性を決め 桃
献血が趣味だと笑う人といる ゆかり
ポイントカードで財布ぱんぱん に
ぴかぴかのビリケンさんに頬ずりす 庵
大綿虫のとんでくる頃 小石
月の道もどれば紅葉鍋が待ち 桃 月・冬
杜氏の嫁の好きな舟唄 庵
凪いでなほ丹波の里に花降らせ に 花・春
はるの憂いに染まる極楽 百
ナオ
重箱に草餅を詰め野点傘 に
若芝の庭午後の日矢受け を
高校のビブリオバトル接戦に 芳
親子喧嘩の出来る家族も 閑坐
泣かせてよ目薬入れただけだから 桃
剃り跡青きゲイに朝蜘蛛 羅
ふたりにも聞こえ始めた隙間風 坐
君のテーブルぼくの本棚 に
翌朝はコパカバーナへひとっ飛び 庵
覇王樹の傷癒す波音 桃
乞はれつつ月物語る千一夜 田助 月・秋
色なき風はため息に似て 桃
ナウ
特Aじゃなくても美味いことし米 芳
二点居住の姉たちの秋 を
米朝の十八番は百年目 坐
背中に鍼を打たれながらの に
いくたびももろ手に受ける花ふぶき 芳
○芳さんの原句は「小さき手の何度も作る花吹雪」でした。「何度も作る」というと舞台の上で散らせる紙の花吹雪を作っているような感じします。鍼の繊細さと花びらの感触を通わせたいという付心はとてもいいと思います。「花守と心通いて花万朶 」「 白髪まで花の声聞く守の人」「満開の花を見届け降りる背な」、「花万朶」という語は花の句の常套語になっている趣きもあり、なるべく出来合いの言葉で片付けない方がよいと思います。「白髪まで」は打越の年取った米朝に通う感じあります。「見届け降りる背な」は、誰が誰の背中から降りるのか分かりにくいです。
「幹倒れど復興の日の花の縁 閑坐」、「復興の日の花の宴」かとも思いましたが、まだ浮いた気分ではないということで、やはり「えにし」の方なんでしょうね。「幹倒れど」がもう少しすっきり言えるといいですね。「幹を撫す復興の日の花の縁」等。
「爪織の袈裟翻る花の下 しをん」、「爪織」はYouTubeで見ましたが、凄い技術ですね。「袈裟翻る」は重たいです。「爪織の出来を見てゐる花あかり」くらいでしょうか。
「人声のとび込んで来る花の窓 うに」、「十牛図」に置ける「入鄽垂手(にってんすいしゅ)」を見るような、日常への帰還を思わせる付けです。これ頂こうかと思いましたが、前句もうにさんで。
「うたかたの花の盛りを止めおく 桃」、「花の盛り」をとどめおくのに、鍼を打っている芸人でしょうか。イッパンジンではないですね。あはれをかしみがあって、よいですね。
「散り初めし花の下ゆく白き杖 庵」、鍼と盲人というので繋がっていますが、そこだけに寄りかかってない上五中七です。「散り初めし」と過去形にせず、「散り初める花にあづける白き杖」などとしてみると優しい感じ出せますね。
「咲けば散り来世想いし花朧 千百」、少し材料が多く、一句が重たくなっています。連句は一人で全部言わなくてよいので、もうちょっと甘えてもいいいと思います。「背中に鍼を打たれながらの/咲けば散る花に来世を思ひゐて」等。
「まだやれる奮い立たせる花の意気 芳」、鍼を打って元気になった、という原因・結果の付けです。
「夜詣りに上る階花の雨 柳下」、背中に鍼を打って、夜詣り、階、花の雨となると、匂いの花としては少々(相当)マイナーです。お百度のようでもありますが、明るい部分があるといかなと思います。
「覚めぎはに花の匂ひのいづくより うに」、鍼打ってもらって、いい気持ちで寝込んで仕舞えば、こんな花が待っています。
挙句は執筆として私付けさせて頂きます。これはあした。