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■満尾☆★米字「風鈴を」★☆
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米字「風鈴を」
風鈴を見てゐる猫の夕かな 桃太郎
ほたるぶくろに灯(トモシ)入る頃 雀羅
咳払影絵の舞台整ひて うに
空気読まない派手な着信 芳
九時五時をしっかり守り窓際に 笑女
八枚切りのパンは売り切れ に
なで肩の影をふみふみ小望月 安庵
へちまを下げる宗匠の路地 桃
ウ
さわやかにキャッチボールの捕球音 芳
牛若丸は甲子園かも しをん
恩師への弔辞を諳んじてをりぬ 閑坐
花に雪ふる昼の邂逅 羅
佐保姫はお菓子のように化粧して 桃
髪をバッサリ切って卒業 坐
半刻をいけない人と蛍舟 女
夏の霜にはため息が溶け 庵
ペン先のインク固まる文机 芳
金運上げる風水に凝り 桃
あの頃も今も聞く耳もたぬ父 女
石垣崩すガジュマルの木は 上里
二オ
床の間に人形をおく初景色 羅
膳のさびしき雨の正月 庵
おとづれはメトロノームの鳴りてより に
目覚めた猫の手足のびやか 小石
くたびれた営業マンのいるベンチ 芳
今は昔の孟母三遷 を
針金の家を出てゆく鴉の仔 羅
夕べの虹をひとは見届け に
端とはじ耳にあてれば水の音 庵
湖畔と犬と若き女性と 坐
明日からのシニア講座に上り月 を
ホームの底にすだくがちゃがちゃ 坐
二ウ
露寒の故郷に住む人のこと 桃
縁談十組纏めると言う を
痛い目にあえば分かるさ本気度が 女
白村江からずっとこのかた 羅
穫れすぎた茄子の料理を四品ほど に
走り書きには昼寝起こすな 芳
馬肥えてお仙ころがる秋を待つ 庵
風ニモマケズ凛と磯菊 芳
銀鉤のめぐり来るとき熱を出す に
イザナミ追えば逃げるイザナギ 女
おぞましき姿を花にかえ給え 庵
鏡の中も抱卵期なり 羅
三オ
猫の子を窺っている恋がたき 坐
少し言葉の多すぎた夜 桃
完璧なアリバイが生む不信感 芳
お約束ならここでカツ丼 桃
勝負する前に勝負がついてをり 芳
朝がくるのか夜になるのか 石
流眄(ナガシメ)のブルーボーイに秋扇 庵
懐紙の上に石榴弾ける 羅
上り来て夕月淡き東慶寺 を
寄せては返す人の世の波 桃
船上で万歩計見る几帳面 に
ポジティブ思考裏目裏目に 女
三ウ
神集ひしてゐる庭の頼み事 坐
風邪声に効く甜茶(テンチャ)のど飴 桃
母と娘が同窓になる芸大に 羅
恋の舞台に度胸試され 坐
男気のラップバトルを見せつける 芳
紙より軽い約束があり 桃
後出しのチョキ出す人の舌真っ赤 女
百葉箱はぺんき塗りたて 石
空蝉は月の光の中に絶え 桃
逍遙趣味と履歴書にかく 庵
何も持たず何も奪わず花あかり に
盃を追ふ人の曲水 坐
ナオ
囀りに逃がした鳥の声まじる 羅
また戻り橋鬼の仕業か 女
番号を呼ばれて順に渡る川 庵
忍者修行のツアー満員 芳
此処彼処地域おこしに励む長 里
ジルバ踊れる相手いないか 桃
触れてみる金のピアスが冷たくて を
月を抱きし冬眠の蛇 庵
不夜城の弁財天に朝を待つ 坐
パワースポット手話の賑やか 桃
健脚の学芸員を追っかける 芳
背負子の中身危険いっぱい 女
ナウ
何事か雀の騒ぐ朝の縁 桃
翁と姥に竹酔の日は を
ドラえもん宇宙ロケット貸しとくれ 遥夢
ドヤの暮らしもあすはみそかに 羅
おおいなる海老が見つかる浅草寺 を
宅配便を待って永き日 芳
ふはふはの花かつをならちよっとやる に
色紙に添える腰折の讃 執筆
令和元年七月十三日 起首
令和元年九月五日 満尾
○米字「風鈴」の巻めでたく満尾致しました。付句を下さった方々、ご覧になって下さった方々、そして裏方として支えて下さった、ホームページの前担当の松澤龍一さん、その後を受け継がれた山中たけをさん、有り難うございました。百韻、米字を含めて、10巻以上の連句付合いをさせて頂きましたが、やりとりを通して、ご一緒にいろいろ大事なことの確かめをさせて頂きました。付句治定に当たっては、相当に恣意的、気分本位な進め方ではなかったかと思いますが、ストレスを覚えられた方もおありだったのではと思いますが、いたらなかったところはおゆるし下さい。一巻の表記につきましては、
文語、口語、仮名遣いも歴史的仮名遣い、現代仮名遣いが混在しています。俳諧の文体として、統一した表記をすることも勿論嗜好の一つですが、ミックス文体は俳諧の取材を拡げ、表現の多様性を呼び込み、何より「新しい付味」を発見して行く上で、表記の自由度は大事な要素だと思っています。連句のドグマにとらわれず、常にまっさらな気持ちで(私自身常に躓いていますが)、色々な試みをしていければと願っています。
この一巻の特徴は、猫が3匹隠れているところ(虎は昔から1回)、匂いの花を使いにくい「花かつを」で締めたというところでしょうか。「かつを」が飛び込んで来て、幸運でした。
この後は、梅村光明さんのお捌きで、新形式の斬新な連句体験が出来ると思いますので、どうぞご期待下さい。有り難うございました。(雀羅 拝)