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インターネット連句
本宝塚「雪螢」の巻
1月22日
皆様、お待たせしました。
長年連句を巻いてきていつも悩むのが、挙句の季語の選択ということで、同じ思いの方は多いのではないでしょうか。つまり、殆どの挙句の前には「花」があり、当然季は晩春です。そして挙句は晩春か三春の季語となります。一巻を滞りなく巻き終える役割があり、そうなると句柄も自ずと決まりがちになり、使える季語もマンネリ気味になるという問題を抱えています。
その挙句によく用いられる晩春の季語の一つが「踏青」です。「青き踏む」も同じ意味として用いられます。その「踏青」を用いて詠まれたのが今日さんの、
「羽織の紐を解いて踏青」です。そして、この巻の挙句としてこの句を採りました。和服を着ての野遊びは、曾ては当たり前の光景で有った筈で、その所作である羽織を脱ぐという、さりげなさを詠まれた点に魅かれました。
昨年の12月1日から53日間に亘る連句興行、本宝塚「雪螢」の巻、本日満尾となりました。ご投句していただいた皆様に感謝申し上げます。
次の興行も出来るだけ早く始めたいと思っていますが、少し充電期間をいただきます。次の形式は改めてお知らせします。乞うご期待!!
告知をひとつ、日本連句協会報の2月号に、昨年ここで巻き上げました作品である、ソネット3巻とテルツァ・リーマ1巻が一挙掲載されます。そして、今回の「雪螢」もいずれ掲載する予定となっています。
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本宝塚「雪螢」 2020.12.01起首 2021.01.22満尾
雪の連
行く先を風に任せて雪蛍 芳(冬) 雪
紫キャベツサラダ彩り 光明(冬)
君笑めば凍てる心も溶くるらん 遥夢(冬恋)
在宅ワーク募る逢ひたさ 炬燵猫(恋)
センサーで手水オン・オフ初社 日和(新年)
毬杖打ちの村は賑はひ マリンバ(新年)
笛太鼓東京音頭繰返し 晋山(雑)
星の連
とんび輪を描く原つぱの上 秋草(雑)
日焼した顔も晴れやかバイク旅 すみれ(夏)
負けん気を出すラムネ早飲み 芳(夏)
夏星のひとつ二人の星と決め ゆき(夏恋) 星
季の移ろひに歩み揃はず メロン(恋)
白無垢のお色直しはチマチョゴリ 芳(恋)
済州島(チェジュ)の浜辺で探す貝殻 しをん(雑)
月の連
携帯はもうすぐ電池切れさうで すみれ(雑)
蓑虫鳴けば猫の耳立ち 秋草(秋)
ひたひたと帰山の僧の月を連れ 遊子(月) 月
老舗秘伝の旨き鱲子(からすみ) 炬燵猫(秋)
許されぬ恋語りたる素浄瑠璃 遥夢(恋)
熱愛覚めて幕が下ろされ ゆき(恋)
坂道の彼方そびゆるビルがあり 揺子(雑)
花の連
客足絶ゆる夜の居酒屋 晋山(雑)
もう一度唇を当て投函す ゆき(恋)
偲ぶ思ひにいつかしら痩せ 秋草(恋)
かりそめの妻のふりする遍路宿 炬燵猫(春恋)
薄氷に乗る陽ざしざらざら 遊子(春)
花ふぶき別れゆくもの来(きた)るもの 遥夢(花) 花
羽織の紐を解いて踏青 今日(春)
皆様の付句
羽織の紐を解いて踏青 今日(春)
*この句をいただきます。
故郷に似たる糸遊の丘 遥夢(春)
*挙句として、納まりの佳い句になっています。
パズル楽しむうららかな午後 すみれ(春)
*ふとどんなパズルか考えてしまいます。
鯥五郎飛ぶ潟の常しへ 遊子(春)
*動きを加えて大きく場面が広がってしまった感があります。手垢の付いていない挙句の季語として工夫されたことは伝わりました。
玻璃戸に揺れる春を惜しみつ 秋草(春)
*読者の想像力に訴える、繊細な表現に挑んだ挙句です。
孫誕生を祝ふ桜湯 ゆき(春)
*前句を人の死と誕生として解釈されての付け句になりましたね。
連凧揚がりジャンプする児等 芳(春)
*凧揚げのシーンを鋭く切取りました。
鳩時計巻くのどらかな午後 しをん(春)
*何の問題もそこには存在しないという、挙句の果てが見えます。
嬰児夢見る桑籠の中 炬燵猫(春)
*夢は何歳から見るのでしょうか。嬰児にとっては現が夢ではないかと思います。蚕を育てる桑の葉を摘み入れる籠に、嬰児を入れるという発想はいいですね。
柳絮飛ぶ中ハーフマラソン 晋山(春)
*一巻の挙句として、進行中のマラソンを詠まれましたが、挙句は後に続かないよう、これで一巻の終りとなるような句が求められので、「柳絮飛ぶ中マラソンを終え」とすれば、充分な挙句になりますね。但し、「柳絮」は仲春の季語なので、季戻りになってしまいます。