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光明
ゲスト

インターネット連句
 六条院「核の終り」の巻
2月12日
 皆様お待たせしました。六条院「核の終り」の巻の解纜です。
 さて、今回の発句にはゆきさんの「春兆す核の終りの始まれり」を採りました。そして、その脇句を「麦を踏むのも父と暮らせば」と付けました。
 皆様ご存知のように、去る1月22日に核兵器禁止条約が発効しました。この内容は「核兵器の開発・保有・使用を全面禁止」を謳い、将来的な核兵器の全廃へ向けた核兵器を包括的に法的禁止とする初めての国際条約で、1996年に起草されてから25年後に漸くヒバクシャの長年の願いが適ったものです。
 作家の井上ひさしが1998年8月4日の朝日新聞山形版に、「被爆した父と娘を描いて」と題したエッセイを寄せています。そこには「人類史は、ヒロシマ、ナガサキで折り返し点にさしかかったのです。自分の作ったもので自分が存在しなくなるかもしれない。これは世界観を根本から変える出来事でした。」と書かれ、「この兵器は未来を考える人間の力を封じてしまう。原爆とは、そんな特別な爆弾です。あのとき、どんな人類史的な出来事があり、人の意識がどう変わったか。それをさまざまな人がさまざまな形で再構成して伝えていく必要がある。ぼくもこの点にこだわってきたが、なかなか作品にできませんでした。」とあって、やっと書き上げられたのが、被爆した父と娘を描いた「父と暮らせば」(1994年初演)でした。
 みゆきさんの発句は、核兵器禁止条約の発効を声高には詠まず、静かに「春の兆し」と詠みました。その脇句にはどうしても井上ひさしさんの思いを句にしなければと考え、「麦を踏むのも父と暮らせば」と詠みました。
 皆様の発句候補句にもそれぞれ脇句を付けさせていただきました。
 
 次の春邸3句目は春月の句を韻字留めでお詠み下さい。
 
 ここで再度「六条院」形式の紹介をさせていただきます。
 *句数は二十四句・(六句×四連)。
 *一花四月(花は春季のみ。月は各連に一つ。それぞれ定座は無し)。
 *発句は当季とし、四季順候とする。当季が春なら、つぎは夏・秋・冬の順
  で進みますが、季題は各連一季とします(冬季に新年を付けることは可)。
 *各連の名称も「春邸」、「夏邸」、「秋邸」、「冬邸」の連と呼びます。
 *春秋は三句から五句まで、夏冬新年は二句から三句まで。恋句は各連二句
  から四句までとします。
 「六条院」形式には表・裏はありませんが、基本的な式目は歌仙式に倣って進めることとします。なお仮名遣いは歴史的仮名遣いとさせていただきます。不馴れな方はこちらで直しますので現代仮名遣いでも結構です。また、同字は月・花以外は一語一会です。
 それでは、春邸三句目の締切りを2月14日の20時とします。揮ってご投句ください。

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   六条院「核の終り」    2021.02.12起首

春邸 春兆す核の終りの始まれり      ゆき(春)
    麦を踏むのも父と暮らせば     光明(春)
                       (春月)
                       (春恋)
                       (花恋)
                       (恋・雑)

夏邸                     (雑)

  この木と決めて耽る観梅      光明(春)
 「蕗味噌」の香ばしい香りから故郷の「訛り」という音を思い出させた。
*満開の白梅薫る局かな        晋山(春)
  鴬笛を吹いて戯る         光明(春)
 「六条院」の場合は「局」ではなくて「屋敷」「邸」になります。

皆様がお寄せくださった発句候補句に、それぞれ脇句を付けました。
*沖鴎行き交ふ渡船春北風(はるならひ)今日(春)
 春北風渡船行き交ふ路閉ざす     今日(春)
  白魚汲む網陸に引き揚げ      光明(春)
 「鴎」と「渡船」と「春北風」に三段切れの感ありですね。
 「春北風渡船行き交ふ路閉ざす」とすれば季語に添っていると思います。

*春兆す核の終りの始まれり      ゆき(春)
  麦を踏むのも父と暮らせば     光明(春)
 この句をいただきます。

*踊り子の太鼓の音や梅見茶屋      芳(春)
  残る氷に走る罅割れ        光明(春)
 川端康成「伊豆の踊子」を想いました。

*蕗味噌や雑踏に聞く郷里訛り     遥夢(春)
*おほどかに妻恋ふ鳥の往き交ふや  メロン(雑)
  不易なるもの育つ梅林       光明(春)
 「鳥の妻恋」は三春の季語ですが、「妻恋ふ鳥」が季語になるかどうか、難しいところですね。

*伝説や日本獺祭る魚         日和(春)
 吾が机上獺の祭のごとくあり     日和(春)
  物憂ひ顔で侍る恋猫        光明(春)
 推敲の余地ありですね。まず「伝説」をどう読み取るか、あえて「日本獺」とする理由は、と読み直せば、単に「獺の祭」を言っているだけ。「吾が机上獺の祭のごとくあり」としましょう。

*懊悩の我を残して春動く      炬燵猫(春)
  絵踏重ねし像の薄らに       光明(春)
 この句も取ろうか悩みました。

*思ひ人ありて麦踏無心なり      秋草(春恋)
  色となりたや美しき梅が香     光明(春恋)
 恋句に仕立ててみました。