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インターネット連句
六条院「核の終り」の巻
3月2日
皆様お待たせしました。
夏邸5句目は夏月の句でした。前の句のコメントの中で、「生類」が出ていないということを記したせいか、今回の8句の付け句の内、4句が「金魚」「ヒキガエル」「子亀」「もふもふ」を詠んでいました。
ここは難しいところで、あくまでも月の句は月を愛でるべきでは、という考えと、月と生類との取り合わせを楽しもう、という思いとのせめぎ合いになりました。結論は生類に魅かれて、炬燵猫さんの「月照らす小さき金魚の小さき背」を採りました。色彩を含んだ言葉が前句に「青蚊帳」があり、そして「金魚」と続きますが、ここは打越ではないので問題無しとしました。
夏邸の6句目は夏か雑の短句を仮名留めでお詠み下さい。
「六条院」形式には表・裏はありませんが、基本的な式目は歌仙式に倣って進めることとします。なお仮名遣いは歴史的仮名遣いとさせていただきます。不馴れな方はこちらで直しますので現代仮名遣いでも結構です。また、同字は月・花以外は一語一会です。
夏邸6句目の締切りを3月4日の20時とします。引き続き揮ってご投句ください。
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六条院「核の終り」 2021.02.12起首
春邸 春兆す核の終りの始まれり ゆき(春)
麦を踏むのも父と暮らせば 光明(春)
弾き語る路上ライブの朧月 芳(春月)
不意の接吻雪解の庭 炬燵猫(春恋)
白無垢の肩を彩る飛花ひとつ 遥夢(花恋)
晩のおかずはいつもコロッケ 秋草(雑)
夏邸 ポパイ見て身近になりぬアメリカン 晋山(雑)
国境越へて添へる日を待つ メロン(恋)
馴初めも別れもネット司り 揺子(恋)
躊躇ひがちに潜る青蚊帳 秋草(夏恋)
月照らす小さき金魚の小さき背 炬燵猫(夏月)
(夏・雑)
(雑)
皆様の付句
夏の夜ビルの谷間に月の舟 縁糸(夏月)
*「月の舟」は、連句では舟という形象をなぞる「半月」から「三日月」とされていますが、和歌的には丸い月でも空を移動する様を、漕ぎゆく舟に喩えるというように理解されてもいます。ここでは夏月として、「夏」に「月の舟」をあしらうことで、オーソドックスな夏月の句になりました。
分からない寂しさ覚え夏至の月 芳(夏月)
*「夏至」は昼が一年中で最も長いということから、短い夜に出る「月」の寂しさに感情を重ねたものと思われます。ここで「分からない」と句で詠まれては、物足りなさを覚えます。あくまでも「詩語」を探して詠んでいただきたいものですね。
小家にもいとけざやかに夏の月 揺子(夏月)
*さて、「けざやかさ」あるいははっきりしているさまと、「夏の月」の状態の表現が重なるかどうか、やや疑問を覚えます。熱帯夜などに出てくる「月」が本当にはっきりしたさまなのか、今はそうは思えない気持ちです。
短夜の月そそくさと渡り行く メロン(夏月)
*「夏」を使わずに夏月を詠んでいただきました。まさに「そそくさ」と「渡りゆく」月の様子に納得させられました。
月照らす小さき金魚の小さき背 炬燵猫(夏月)
*この句をいただきました。
元仙女月に泪すヒキガエル 晋山(夏月)
*元は仙女が月に涙してそこに蟇がいる、ということでしょうが、どうも句意が伝わりません。「仙女」は月の異名でもある「嫦娥」のことでもあり、そこに「元」が付くとはどういうことなのか、混乱しますね。もっと推敲されることを願います。
月清か子亀顔出す眠たげに 秋草(夏月)
*この「月清か」の「清か」は「爽やか」に通じ、秋の季語と取られる悩ましさがありますね。同じ可能性として「月冴ゆ」と同源であり、これは冬の季語になります。この句は「子亀」が夏の季語なので、あえて「清か」は用いずに「月の舟子亀顔出す眠たげに」としてはどうでしょう。
もふもふの水掛不動月涼し しをん(夏月)
*「もふもふ」とはインターネット上で用いられる俗語とされ、動物の毛などの柔らかい触り心地のことであり、またはその動物の毛を撫でたり摩ったりすることにも言い、さらに進んで、今ではそれらの猫や犬のことでもあるようです。初めての言葉で興味深いのですが、残念ながら「不」字が春邸4句目に既出でした。