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#68814
光明
ゲスト

インターネット連句
 十三仏行「爆心地」の巻
8月22日
 お待たせしました。新形式である、十三仏行「爆心地」の巻がスタートしました。発句は私が詠み、皆様に脇句をお願いしたところ、9句もお寄せいただきました。
 「十三仏行」形式を創案された故三好龍肝氏は、「俳諧は道楽の果であり、(略)道楽の果とは未来に進むことである。それは言い換えるならば死後の世界とも言え、死後の世界の供養を司る十三の仏の表数を戴くのが至当ならざるやと思われる。この十三仏を追修することによって菩提円満、煩悩を治し(略)追修は成就するなりと仏家は説いている。」と記しています。つまり、この形式に遊ぶことが、「現世を逃げだして来世に回生を願うという、まことに煩悩の塵埃にまみれた魂胆である」と、自嘲気味に述べています。
 さて、発句は「人の世の遺恨ふたつの爆心地」と、原爆が落とされたヒロシマとナガサキを悼んで詠みました。このふたつの都市が、人類の手によって爆心地になったという悲劇に思いを馳せました。季語としては「忌の句」になり、「十三仏行」という形式に託す発句になりました。
 そこで脇句に選んだのは、ゆきさんの「願ひの糸に結ぶ折り鶴」です。秋の季語「願いの糸」は、七夕の織女と牽牛の伝説に因んだもので、その糸に折り鶴を結ぶという、作者独自の平和への願いを、この脇句から読み取りました。
 核兵器を世界から無くすと言う、ヒロシマとナガサキの願いが、この「願いの糸」なのかもしれませんね。
 次は第三です。秋月の句を第三の仮名留め(て・にて・らん・もなし)を適用してお詠み下さい。
 なお、基本的な式目は歌仙式に倣って進めることとします。仮名遣いはいつも通り、歴史的かな遣いとさせていただきます。不馴れな方はこちらで直しますので、現代仮名遣いでも結構です。同字は月・花以外は一語一会とします。
 次の第三の締切りを24日の20時とします。揮ってご投句ください。

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    十三仏行「爆心地」   2021.08.15起首

表  人の世の遺恨ふたつの爆心地     光明(秋)
    願ひの糸に結ぶ折り鶴       ゆき(秋)
                       (月)
                       (雑)
                       (夏)
裏                      (夏)
                       (恋)
                       (恋)
                       (冬月)
                       (冬)
                       (雑)
                       (春)
挙句                     (花)

皆様の付句
精霊蜻蛉水を打つ頃         遥夢(秋)
*この句も採りたくなりましたが、「精霊」が忌の句である発句に付き過ぎの感有りのように思われます。「蜻蛉」だけでよかったかも知れません。

七夕の夜に平和と綴る        縁糸(秋)
*下句の「平和と綴る」が四三です。リズムが寸詰まりになっているというのを感得していただければ幸いです。来るだけ避けましょう。ここでは上下入れ替えれば解決します。「平和と綴る七夕の夜は」と五二にしましょう。

涙隠して抱く曼殊沙華        今日(秋)
*この句は下句が「抱く曼珠沙華」と、二五になっています。このリズムもできるだけ避けたいものです。「涙隠して曼珠沙華抱く」とすれば落ち着きますね。

鳥影追へば行合の空        しをん(秋)
*焦点が拡がりすぎた感もありますが、発句との二句一章としては成立していますね。

願ひの糸に結ぶ折り鶴        ゆき(秋)
*この句をいただきました。

遠く近くと蜩の声           芳(秋)
*「遠く近くと」に、ふたつの爆心地が位置づけられる気がします。蜩の声も切なく聞こえますね。

線路伝ひに御一新草(ごいつしんぐさ)日和(秋)
*鉄道草とも称され、線路に沿って生える草、それだけを詠んでいるのが勿体ない気がしました。

端座してただ聞く荻の声       揺子(秋)
*推敲すれば、「端座しをれば荻の声あり」でしょうか。

怯まずすだく小さき鈴虫      炬燵猫(秋)
*発句と一章になり、草も生えないと言われた爆心地に、いまでは鈴虫も鳴くという、命の営みの希望が読み取れます。