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#43088
雀羅
ゲスト

■⑪歌仙「浅春の」脇治定         2019.3.32 起首
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キーンドナルド氏に
浅春の過客閲(ケミ)する月日かな           雀羅
 書棚に馨る梅の一輪                 摩悠

○キーンドナルド氏の日本文化への恋慕、そして研究者としての静謐の日常をうべなう脇句です。キーン氏は東京北区にお住まいだったということで北区名誉区民に選ばれていますが、北区十条で「シルヴプレ」という連句会をお世話されている摩悠さんにもお声かかけましたら梅一枝頂きました。蕪村に「しら梅に明る夜ばかりとなりにけり」という辞世の句がありますが(『常盤の香』)、その「しら梅」に通う「梅の一論」です。

「海超え行きて響く三味の音 あげは」、邦楽もお好きで造型の深かったキーン氏と思いますので、拙句「客閲(ケミ)する」という些か堅苦しいに挨拶に、肩の力抜けて、いいですね。季がないので「海超えてゆく蝶に三味の音」としてもいいですね。

「みちのくからも涅槃西風吹く 不映」、「みちのく」はキーン氏が取り組まれた『奥の細道』でもあり、涅槃会のころ浄土より吹く春風を配し、キーン氏への敬慕が伝わります。不映さん、「金貨より花の並木の勝るとき」が「造幣局の通り抜けの桜」を言ってるとは思いつきませんでした。関西の方ならなんでもないことでも生活圏が違うと連想出来ない、というのが連句の面白いところだと思います。「仄めかし」と言いましたのは、連句の付句は事柄をはっきり言ってはいけないという意味ではなく、面影の付けの言われるような“朦朧体”を持ち味とする付け方もあると、ということを言いたかったのでした。

「大輪画きて帰る白鳥 安庵」、英語文化圏に育った方の日本文学の理解の達成は日本文学の普遍性を語るものとして大きな業績があり、そこをみとめ、ご逝去を天に帰る白鳥に見做し、敬意と哀悼がこもります。

「獺の祭に紙捻よる人 小石」、「獺の祭」ということで、正岡子規に深い共感と洞察を示した(『百代の過客』にも取り上げられています)キーン氏の仕事に重なります。「紙捻」は原稿や資料をととのえるひもということですね。

「机上の眼鏡に映る風景 うに」。机上の眼鏡とそれに映るものだけを写し持ち主の不在を暗示する、映画の技法です。「めがねに梅の映る文机」と漢字を開けばキーンさんの柔和なお顔を感じさせられます。季語をわすれちゃいましたが、構図はしっかり取れてます。

では第三をお願いします。春です。「に・て・にて・もなし・らん」で留めます。