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インターネット連句
ソネット「仁王門」(抱擁韻)
5月16日
お待たせしました。日和さん、「~乞ひ」は沢山ありますが、季語にならずに「~ごひ」で使える語句はふたつに限られました。「暇乞ひ」と「命乞ひ」です。このふたつを用いて11句目に11句の付けが集まりました。課題とも言える語句を用いて句を案ずる事態に賛否はあると思いますが、捌きとしては共通ベースを判断基準にできるので、ある意味付句の読みに対して助けになったかも知れません。
その結果として、葵さんの「天目の茶碗救へと命乞ひ」が目に留まり採りました。短い句の中に、病没した作家で私と同い年生れの葉室燐が書くようなドラマが、秘められているように思われました。天目茶碗の陶工を主人公にしたような、人の胸の中に深く生き続ける密かな想いと、それに対して誠実に生きようと葛藤する人々、といったテーマを葉室さんは得意としているからです。
さて、残りあわせて3句になりました。12句目は春の短句をお詠み下さい。脚韻は先に出ましたe韻の「まく」です。平仮名での「まく」は二回目は無いのと、同じ意味の「巻く」は除外してください。
仮名遣いは歴史的仮名遣いとさせていただきます。不馴れな方はこちらで直しますので現代仮名遣いでも結構です。また、同字は一語一会です。
それでは、12句目の締切りを18日の20時とします。揮ってご投句ください。
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ソネット「仁王門」(抱擁韻) 2020.04.28起首
1 葉桜や夕陽溶けゆく仁王門 炬燵猫(夏)a
2 サングラス取り漢佇む 光明(夏)b
3 街角のカフェに読みさすアフォリズム 楽之(雑)b
4 金庫の宝二束三文 秋草(雑)a
5 満ち欠けを諾ひ巡る今日の月 メロン(月)c
6 夢見る朱鷺を起こさないやう 小石(秋)d
7 新酒利く審査員らの無言行 ゆき(秋)d
8 浮気責めてもニクい落着き 遥夢(恋)c
9 帰るなと抱き留めるかに雪しまく 夕汐(冬恋)e
10 閉ぢ籠もるのも飽きた寒鯉 安庵(冬)f
11 天目の茶碗救へと命乞ひ 葵(雑)f
12 (春)e
13 (花)g
14 (春)g
皆様の付句
うるむ目の涙訴え命乞ひ 閑坐(雑)f
*こう来ると、何に対する涙の訴えか知りたくなりますね。そこが句を弱くしているように思います。
年季まで勤めし朝の暇乞ひ 遥夢(雑)f
*年季明けによる暇乞ひとは重いものがあります。勤め先も色々想像してしまいますね。
天目の茶碗救へと命乞ひ 葵(雑)f
*この句をいただきます。
友情を示す強気の命乞ひ 芳(雑)f
*太宰治の「走れメロス」を私は想いました。
ごろん坊夢の中では暇乞ひ しをん(雑)f
*「ごろん坊」が辞書に見当たりません。この句の要点なのにどうしたことでしょう。「三年寝太郎」のローカル語か兄弟でしょうか。また、お教えください。
孤独には会話食事と命乞ひ メロン(雑)f
*メンタル療法として必要なことに深く関わっています。
病癒え布団干したき日の日乞ひ 安庵(雑)f
*無事に快癒しての布団干し、その日の晴天を願う思いが伝わります。句としてよくできていますが、残念ながら「日」字既出ということです。
寡婦となり村の旧家を暇乞ひ ゆき(雑)f
*古くは亡夫の弟と結婚させるのを「兄嫁直し」と称しましたが、それも適わずの仕打ちですね。色々考えさせられます。
兄弟子とそりが合ぬか暇乞ひ 秋草(雑)f
*それも修業の内だと思えますが、そこからが転落の始まりとも言えますね。
峠来て城へ限りの暇乞ひ 楽之(雑)f
*峠が国境なのでしょうか、他国へ移る暇乞ひの無念さがよく伝わります。
逆流で悪と闘ふ戦士五飛 今日(雑)f
*残念ながら「五飛」は論外ですね。現代仮名遣いのこの「ゴヒ」と、「~乞い」の旧仮名遣いの(ごひ)は発音に違いがあるのです。だから表記に違いも生じるのです。現代仮名遣いでは「ごい」と明記され発音もその儘発せられますが、これが旧仮名遣いとなると「ごい」と「ゴヒ」の中間ぐらいの発音になるようです。つまり「五」(ゴ)と「飛」(ヒ)を並べても、単に現代仮名の発音を発しただけのことになり、f韻「ごひ」とはほど遠いのです。